毎回の学習サポート終了後、サポーター(院生)から報告書がウェブ上で提出される。この報告内容を、サポートした科目の担当教員にメールで転送する。有用な報告を授業改善や学習指導などの教育活動に役立てることが目的である。
平成23年度は、「個別の学習プロセス作成支援システム」の運用をサポートスペースにて試行した。そのため、科目担当教員には、以下のように報告書を転送した。
■個別学習サポート
昨年度と同じく、「学習支援報告書」中の「支援内容」「特につまずいていた点」「学生の取組の様子や気がついたこと」を、報告書登録と同時にシステムより自動転送した。
〔例〕学習支援報告書(個別学習サポート・リアルタイムFD版)
2011年度 1学期
【サポーター】M1 経営情報システム工学
【対象学生】経営情報システム工学 B2 学生111、学生110
【サポート回数】2
【日付および時間】2011-05-18(14:40~16:40)
【出席者】学生111、学生110
【学生の取り組みの様子や気がついたこと】
【支援した科目名】
【支援した科目の担当教員】
【支援内容】
【特につまずいていた点】
■サポートスペース
支援内容の報告である「事例対応についてのお知らせ」を、共通教育センター所属教員には登録と同時に自動転送。その他の教員には1週間分をファイルにまとめて、毎週送信した。
〔例〕事例対応についてお知らせします(サポートスペース)
●サポーター
電気電子情報工学専攻 M1 △△△△
●サポート学生
課程配属前 B1 △△△△
2011年度 1学期
□───────────────────────
つまずき・課題
□───────────────────────
●日付
2011/07/11
●タイトル
接線の導出
●科目
数学IA
●担当教員
△△△△
●キーワード
【接線】【 】【】
●内容
期末テストの勉強として過去問を解いていたとき、接線の導出問題の解法が分からないという質問。
具体的には添付画像の大問4である。
□‥サポーターの対応‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
●日付
2011/07/11
●対応方法
対面
●タイトル
接線の導出
●内容与式の導関数が接線の微分となることを利用した。また、接線のx座標をtと置いて接線の方程式に代入することで接線の式を得た。
□‥サポーターの評価‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
●自身の指導により問題解決できたか
★★★☆☆
●自身の指導により問題解決ができたか(コメント)
それらしい解答を得ることができた。
●自身の指導は分かりやすかったか
★★★☆☆
●自身の指導は分かりやすかったか(コメント)
今回の問題の考え方について説明しつつ一緒に解いていたところ、質問者が先に解答にたどり着いた。
※共通教育センター所属以外の教員に送信する際には、以下の注意を添えた。
科目担当教員 各位
新システムによるサポートスペース学習支援報告書ファイルをお送りします。以下の点につき、ご了解いただきますようお願いいたします。
○報告書の改善点(個別サポート報告書との違い)
1.サポーターの報告内容を3つに分け(□つまづき・課題、□サポーターの対応、□サポーターの評価)、より具体的で詳細な報告がなされるようにしました。
2.サポーター及び対象学生の実名を記載しました。
いずれも、報告書の内容を向上させ、学生の教育への有用化を図るために行いました。
○学生からの相談内容の秘匿の問題
上記の2については、相談内容の秘匿の点から、従来は報告書を匿名に加工して科目担当教員にお送りしていました。しかし、
1)学習サポートの内容は学習相談に限っており、その報告内容及び報告書の利用も教育目的に限定している。
2)教育目的での報告書の利用に際しては、匿名よりも実名の方がはるかに役立つ。
という理由で、新システムでは科目担当教員への報告書も実名のままとしています。
○報告書の利用にあたって
以上について、共通教育センターの会議で了承され、科目担当教員へも1学期から報告書ファイルの形でお送りすることが認められました。このことにつきご了解の上、報告内容のご確認、ご利用をなさってください。学生への学習指導や授業改善等の教育目的以外でのご利用はなさらないようお願いいたします。
○新システム試行への参加
新システムでは、実際に学生を指導したサポーターへの連絡やサポーターの対応の評価、また報告書の項目のカスタマイズなどが可能となっております。現在は共通教育センター所属教員による試行を行っていますが、この試行への参加のご希望があれば、下記担当教員までご一報ください。センター会議で検討させていただきます。
○ご意見、また送信不要連絡
以上のことにつきまして、ご意見などありましたら、下記担当教員までお知らせください。また、送信不要の連絡は、事務担当者の方にお知らせください。
よろしくお願いいたします。
[目次]
(3) 教員オフィスアワー(質問受付可能時間帯)参照・予約システム
■対象科目数
|
1学期 |
2学期 |
3学期 |
合計 |
専門基礎科目(1,2年) |
34 |
32 |
3 |
69 |
専門科目(3,4年) |
63 |
36 |
0 |
99 |
教養科目 |
8 |
4 |
0 |
12 |
外国語科目 |
7 |
4 |
0 |
11 |
合計 |
112 |
76 |
3 |
191 |
■科目担当教員数
|
1学期 |
2学期 |
3学期 |
専任教員 |
125 |
81 |
4 |
非常勤講師 |
8 |
4 |
0 |
合計 |
133 |
85 |
4 |
科目担当教員のうち、報告書を転送した教員(非常勤講師を含む)に対して実施した。アンケート内容は、1、2学期とも、昨年度2学期と同様にした。個別サポートとサポートスペース両方でサポートのあった科目担当教員には、サポートスペースの報告書について回答を依頼した。
|
対象教員数 |
回答数 |
回答率 |
|||
1学期 |
2学期 |
1学期 |
2学期 |
1学期 |
2学期 |
|
個別学習サポート |
105 |
73 |
24 |
17 |
23% |
23% |
サポートスペース |
19 |
9 |
8 |
5 |
42% |
56% |
合計 |
124 |
82 |
32 |
22 |
26% |
27% |
問1 学習支援報告書に関して、お考えを5段階でお聞かせください。(抜粋)
■報告内容の有用性について
1)学生(科目受講生ら)への指導の参考資料として、肯定的評価は6割から10割であった
[1学期]
[2学期]
2)自身の授業改善の参考資料として、肯定的評価は4割から6割であった。
[1学期]
[2学期]
■報告書の記述内容について
6)欠如(項目の不足等)がないとする評価は、4割から6.5割であった。
[1学期]
[2学期]
8)具体的であるとする評価は、5割から8割であった。
[1学期]
[2学期]
9)詳細であるとする評価は、4割から5割であった。
[1学期]
[2学期]
■対象学生の匿名性について
10)対象学生(支援を受けた学生)の情報が必要とする評価は2.5割から6割であった。
[1学期]
[2学期]
問2 問1の1)、2)の事例につき、よろしければ具体的にお知らせください。(まとめ)
問3 リアルタイムFDへのご意見、ご感想などがあれば、お聞かせください。(まとめ)
■学生への指導または自身の授業改善の参考資料として有用であった
【サポートスペース】
・学生のつまずいている点や理解度がわかることで、授業のやり方を見直すきっかけになる。
【個別学習サポート】
・学生のつまずいている点や理解度がわかることで、授業のやり方、テキストや演習問題を見直すきっかけになる。
・引き続く授業の中で対応ができる。(説明を強調する、説明に時間をとる、要点を追加説明する、練習問題を増やす、実習課題を変更する)
■情報提供として有用であった
【サポートスペース】
・科目の学習に対する受講生の取り組み方がわかる。
【個別学習サポート】
・授業中に学生が直接言い出せないつまずきの情報が得られる。
・学生に困難なつまずきが生じても、さほど遅れずに事態を把握できる可能性がある。
・支援内容を知ることで学生が頓挫したか前進したかを知ることができる。
・宿題への取り組みなど、授業の外での学習状況の一部を把握できる。
・やる気のある学生がいて支援を受けているという状況を知ることは、教員側も励みになる。
■有用ではなかった
【個別学習サポート】
・学生の学力レベルを考えると、つまずきの一般化は難しく、授業を変えるまでの必要はない。
・報告内容が少ないので、つまずきの一般化は難しく、授業を変えるまでの必要はない。
・報告内容から、真面目に授業に出ている学生ではないように思われ、対応の必要を感じない。
・授業中におおむね把握しているつまずきの報告であった。
・分担した授業の範囲ではない報告であった。
・報告書の記述が具体的・詳細でなかった。
・「特になし」といった無内容な報告だった。
■今後も継続を希望する
【サポートスペース】
・授業改善の参考になる。
・継続することが重要。
・昨年度より報告書の内容が具体化していて「リアル」だった。
■改善の要望・提案
【サポートスペース】
・利用者を増やす必要がある。そうすれば、リアルタイムFDの有用性がより発揮される。
・「授業に一言」というような項目があると、教員に直接伝えづらい問題点がサポーターを介してフィードバックされてよいかもしれない。
・学期中の利用頻度が後日でもわかるように、学期ごとに科目別の集計を知りたい。
・「そのような指導はしてほしくない」と感じることがある。そのような場合に調整が必要である。
【個別サポート】
◇報告書の記述内容への要望
・あいまいで参考にならない例:
【支援内容】
テスト対策(過去問の解説:応力ベクトル・粘弾性体モデル)
【特につまづいていた点】
全体的にわかっていないようでした。
「わかっていないようでした」で終わるのでなく、結果的に「わかったのか?」「どこまでわかったのか?」の記述がないと、なぜつまづいたのか、どう補充すればよいか、を考える参考にできない。
・「支援内容」と「特につまづいた点」について具体的記述が必要。
・質問を受けた時の口述内容を再現して書き残す。授業のテキストや配布資料を用いた時は、何ページの何という項目、式、図を使っていたかを併記する。
・学生の特定ができればもっと直接的な指導ができる可能性がある。
・氏名は必要ないが、学生の入学履歴(学力、推薦、(課程))の情報があるとよい。
・毎回の報告内容で重複している項目(例えば担当教員名など)は省略した方が読みやすい。
◇サポーターとの意思疎通が必要
・サポーターを支援するために連絡手段が必要。
・サポーターの質の向上のためにも、教員との懇談の場があるとよい。
◇学生ごとの個人カルテのようなものが必要
・学習支援、生活相談などの情報を学生ごとにまとめ、教員間で共有できるようにすべき。
◇教員に直接質問するという指導が必要
・オフィスアワーも活用するように学生に指導してほしい。
■その他の意見
【個別サポート】
◇サポート自体は有益
・先輩による学習支援は有益。
・対象学生がつまずきを無くして授業の進度ペースに乗ってくれることは有り難い。
◇サポートの効果に疑問
・報告を見ている限りでは学生の学力向上になっているとは思えない。
◇対象学生の情報が必要
・授業への出欠状況を知りたい。授業でかなり強調したのにわかっていない場合があり、授業を受けたのか疑問に感じることがある。
・複数のクラスに分けて実施している科目では、どのクラスかの情報がないと具体的な対応ができない。
◇サポートの内容、サポート自体への疑問
・報告書でよくある例は”単なる宿題の答えを聞きに来て、それを助けること”。宿題は完全解答を求めるために出すのではなく、学生が自ら考え、理解不足のところを自覚させるための側面もある。誰かに答えを教えてもらい、自分で考えることを放棄することへの手助けになっているならば、本末転倒も甚だしい限りである。
・サポーターとの会話によると、わからないところを聞くというより、試験に何が出るかなどの対策なっているようである。
・学力を危惧してサポートをすすめても、受けようとしない学生がいる。また、途中からサポートに来なくなる学生もいる。そのような学生まで大学が面倒を見るべきかについては大いに疑問がある。
◇FDの取り組みとしての疑問
・何でもかんでもばらまけば良いというものではない。「とりあえず全員メール」「とりあえずアンケート」という他力本願の姿勢は大いに疑問。
・「とりあえず送るから要らない奴は申し出ろ」というスタイルが賛同できない。そもそもこれが「FD」なのか?
◇FDよりも学習支援を
・学習サポートにより学部学生の理解が進むことが重要なので、リアルタイムFDでサポーターにあまり負担が増えない方が良い。
◇より有効なFDの検討も
・このように情報を発信しても見ない、気にしない、という教員に対してどのようにFDを行うのか、という視点での検討も必要。
授業担当教員に直接質問に伺ってよい時間帯を対象学生が問い合わせるメールを、共通教育センターのシステムから報告書登録時に送信する。
サポーターが対応しきれない質問が出たりするなど、対象学生が直接教員のところに行った方がよいと判断される場合に利用する。オフィスアワーの公開されている教員にはその時間帯の都合を、そうでない教員には都合のよい時間帯を問い合わせることができる。
今年度の利用件数は1件であった。(1学期個別サポート、対象学生3年生)
学習支援報告書の中では、教員に直接質問に行くよう指導した旨の報告がなされることが時々ある。本機能を利用せずともすむ場合にはそれでよいと考える。
今後も必要な場合には有効に利用できるよう、サポーター・対象学生及び教員への周知を図ってゆく。
1)引き続き、学習支援報告書の記述内容の向上をはかる。
教員アンケートによれば、記述の具体性への評価はある程度得られているが、記述の詳細さへの評価は依然高くない。アンケートでの意見ももとに、サポーターへの指導を改善し、報告書の有用性を高める必要がある。また、「個別の学習プロセス作成支援システム」による報告書でも、全体としては特に高い評価が得られたわけではない。個々のサポーターによるところが大きいと思われるので、こちらも指導が必要である。
2)学習支援において、対象学生・サポーター・教員相互のやりとりが無理なくできるようにする。
「個別の学習プロセス作成支援システム」の運用開始(試行)により、Web上でのやりとりが可能となったが、実際のやりとり例は多くない。また、個別学習サポートでの教員・サポーター間の意思疎通も必要であるが、その仕組みはまだ作られていない。たまたまサポーターを知っている教員が必要なときに連絡をとっているのが現状である。今後、共通教育センターの関与の下で、教員からサポーターへの連絡方法を制度化するとともに、サポーターへの適切な支援がなされるようにしいてく必要がある。システムの試行に参加する教員を増やすことも必要である。
3)教育上必要な場合には対象学生の匿名性を解消できるようにする。
教員アンケートで対象学生の情報が必要とする評価は全体ではさほど高くない。だが、学習指導にはぜひ必要であるとする意見もあり、それももっともである。実名が記載された報告書を、電子メールで一方的に送るのは適切ではない。学習指導に必要とする教員が、自ら学生の情報にアクセスできるという仕組みが最も妥当であろう。個別学習サポートでは、共通教育センターまたは実施責任者の関与の下で、それが可能となる制度整備を検討する必要がある。また、サポートスペースでは、システム試行への教員の参加を促すことが必要である。
4)教員のその他の要望・意見に応え、取り組みの主旨の理解をさらにはかってゆく。
報告書の記述内容や学生情報への要望だけでなく、学期ごとの科目別の報告書数の公表などの対応可能な要望には確実に応え、また、取り組みへの疑問や意見にも応答する必要がある。このようなやりとりを通じて、本取り組みの主旨の一層の理解を期待したい。
以上